
「あがり症」とは、人付き合いや人前で何らかの行為をするときに強い不安や緊張、恐怖を感じたり、そのような状況を避けることで日常生活に支障が出るものです。
あがり症ではない人でも、人前で何かをしようとすると、緊張したり、恥ずかしがったり、臆病になったりすることはよくあります。
ある調査によると、人口の約40%が常に恥ずかしい思いをしたり、不安を感じたりする慢性的な感情があるそうですが、あがり症の人はこのような「不安」の症状が普通の人よりも顕著で、持続することが特徴です。
そのため、強い苦痛を感じ、仕事、学業、人間関係など、日常生活のあらゆる場面で機能しなくなるのです。
あがり症の人は、以下のような場面で不安や恐怖を感じることが多いです。
・初対面の人と会って会話する
・大勢の人の前で話す
・人前で電話をかける
・人前で字を書く
・目上の人と話したり、食事をしたりする
・会議や話し合いの場で自分の意見を述べる
・パーティーや会合に参加する
・異性の人と話す
・授業で意見を求められる
・人前で失敗する
・自分が注目されるとき
・その他の社会的状況
などです。
恐怖はさまざまな状況や場面で感じることがありますが、これには個人差があります。
ある人は特定の1つの状況(例えば、スピーチ状況)でのみ恐怖を感じ、他の人は2つか3つの状況で恐怖を感じ、さらに他の人はほとんどすべての社会的状況で恐怖、苦痛、不安を感じる。症状の発現、重症度、頻度には個人差があります。また、赤面、震え、発汗などの身体症状が現れることもあります。
このあがり症は、中学生や高校生に多くみられます。
思春期の子どもたちは、自意識が高まり、自分が他人からどう見られているかが気になる年頃です。
他人からの視線を強く意識するようになり、「失敗したらどうしよう」「人前で失敗したくない」と不安になるのです。
授業中に先生の質問に答えられなかった」「異性の前に立つと赤面してしまう」「舞台で大勢の観客の前で話そうとしたら、急に頭が真っ白になって立ち尽くしてしまった」など、発症の仕方は人によってさまざまです。
共通しているのは、一人でいるときは問題なくできることでも、人前ではできなくなるということです。
また、一度失敗すると、また失敗するのではないかと不安になり、その状況を避けようとします。
他人から見れば些細なことでも、本人にとっては大きな不安と恐怖の種になっているのです。
これまで、あがり症は性格の問題だと考えられ「性格だからそのうち治るだろう」と、ひっそりと問題を抱えて生きている人が多くいました。
ただ、実はあがり症は「社会不安障害」といわれるものだと、近年明らかになってきました。
あがり症は精神疾患の一つで、認知行動療法などで治る長年の不安障害の1つだったのです。